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あなたはコメを知っていますか?

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デザインミュージアムの視点から “コメ” に光を当てた企画展が、東京ミッドタウン21_21 DESIGN SIGHT で開催されました。国内外で高まる和食ブームを好機に、コメを新たに見直そうという熱いメッセージを多彩なコミュニケーションで伝えるユニークな展示会をレポートします。

 

コメを再発見する企画展

会場に一歩入ると眼に飛び込んで来るのが、約360倍に拡大した大人の身長ほどもある巨大な籾(もみ)の模型。まるで虫になったような気分になりつつ同じ縮尺の玄米、精米の間を進み地下へと降りると、これまで知らなかった様々なコメが姿を現します。

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入口に鎮座するのはインパクトたっぷりの巨大なコメ模型

 

色も形も様々な世界各地で生産される農作物のコメ。激変する地球環境を進化で生き残った、したたかで逞しい生き物としてのコメ。日本の信仰や風習、土地の形までも変えてきた稲作をマクロ視点から見たコメの隣に、豊かな発酵文化をもたらしてきた麹菌を纏ったミクロなコメが並びます。ごはんや餅、日本酒、調味料といった変化(へんげ)はコメに留まりません。副産物である藁までもが縄や俵などの日用品から神の依り代となるしめかざりまで、“ハレ” と “ケ” 異なるふたつの顔を見せてくれます。

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コメのいろいろな顔が多彩なコミュニケーションで表現された展示

 

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身体で感じさせる展示のデザイン

そんないろいろな顔を持つコメを多彩なコミュニケーションで表現しているのが、この企画展の大きな特徴です。全ての展示は自由に撮影が許され、WEBサイトへの投稿やSNSでの拡散が積極的に呼びかけられています。

入口の巨大模型やオブジェのようなしめかざり、色とりどりのごはんの友を乗っけた茶碗飯など、見て撮って楽しいモチーフが会場のそこここに。米偏の漢字を選んで自分の運勢を占う「コメみくじ」や、懐かしいかまど炊きに挑戦できるバーチャルゲームも誰かに話したくなる“ここにしか無い体験”です。

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思わず撮影したくなる、現代アーティストによるオブジェのようなしめかざり

 

そして、体験で得たコメへの新たな興味を展示の中だけで終わらせない仕掛けも充実しています。WEBサイトに連載されたコメと暮らす “コメ人”のレポートや多彩な顔ぶれのトークイベントではディープなコメの世界が覗けますし、企画に参加した米農家さんのコメを特設店鋪で購入すれば“知 る”から先の、選び、買い、炊いて食べるという行動へとつながります。

身体で感じた知識によって、コメを見つめ直すだけではなくひとりひとりが行動を変えていく、そんなきっかけとなる種を撒くことこそがこの企画展の狙いなのかもしれません。

 

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次へ渡すバトンを取りこぼさないように

会場で上映されている「白姓(はくしょう)」は、コメと生きる人々を美しい風景と共に写し撮ったドキュメンタリーです。そのワンシーン、日本伝統の酒造りを守る杜氏が酵母の声に耳を澄ます姿に、菌など知らなかった古(いにしえ)びとがコメに宿る神の存在を信じたことが自然に肚落ちします。

一方で、そんなコメと人とが豊かな自然の中で深くつながった暮らしが、私たちの日常から失われつつあるのも事実です。コメ展が見せてくれたこの文化のバトンを、ほんの一部でも自分のものにして次に伝えなくてはなりません。まずは、買ったお米を今晩土鍋で炊くところから始めてみましょうか。

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日常から遠くなってしまった美しい日本の原風景

 

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会期中にオリジナルパッケージで販売された、企画に参加した米農家さんのコメ

 

【参考・出典】

21_21 DESIGN SIGHT  WEBサイト 企画展「コメ展」