あなたは、ひと月どれくらいのお米を食べていますか?少子化や食の欧米化などの影響で国内の米の消費量が減少の一途をたどる一方*1、和食がユネスコ無形文化遺産に登録される*2 など日本食への注目は国を超えて高まっています。たとえ食卓での存在感が薄くなったとしても、日本の主食はやはり米。そんな米をテーマに掲げるユニークなライフスタイルショップがあると聞き、早速訪ねてみました。
*1: 農林水産省の消費データによると、戦後の1家庭当たりの米の消費額は1962年の118.3キログラムをピークに、2005年にはその約半分のの61.4キログラムにまで減少。
*2: 2013年12月には和食がユネスコ無形文化遺産に登録
懐かしくて新しい、米がテーマのライフスタイルショップ
SAZABY や Afternoon Tea などの人気ブランドを展開する株式会社サザビーリーグが情報発信地・銀座の一角に2013年にオープンした「AKOMEYA TOKYO(アコメヤ トウキョウ)」。日本各地の加工食品や調味料、お酒、調理道具や食器・雑貨など目にも楽しいバラエティ豊かな商品群は訪れる人を飽きさせません。
こういった衣食住と生活全般に関わる日用品を扱うライフスタイルショップはこの数年増えていますが、AKOMEYA がユニークなのはそのテーマが「米」であるところ。1階入口のショウケースには全国の選りすぐりの米が並び、店頭スタッフの説明を聴きながら選んだ米を玄米・白米はもちろん好みの分づきで精米してもらうことができます。精米したてのほのかな香りは、懐かしさと同時に量販店で手に入る商品には無い米本来の存在感が感じられ新鮮です。
米屋であって米屋でない、AKOMEYA
そんな「AKOMEYA」というネーミングには、 “ a komeya(米屋)” の意味と、“〜がない” “非〜” といった否定を意味する英語の語根「a」をつけた “ a-komeya(米屋でない)” という二重の意味が込められているそうです。日々の食卓をおいしく豊かなものにするためのあらゆるヒントを提供する米屋 “だけ” に留まらないショップ、それが AKOMEYA なのです。
例えばお米を炊く調理道具ひとつとっても、伝統的な土鍋から琺瑯引きの鋳物の鍋、無水鍋や圧力鍋など、使い勝手も炊きあがりも異なるこだわりの詰まった品物が並びます。そのひとつひとつに手で触れ、添えられたカードから背景にある物語を知り、それぞれの商品を使い込んだ店頭スタッフのアドバイスを聴く。そんな実店鋪ならではの体験の中でこれまで知らなかった “ほんもの” の逸品や自分の好みを発見し、食卓に持ち帰ることができるのが AKOMEYA の最大の魅力かもしれません。
主食である米が、足を運ぶ動機に
食事処「AKOMEYA厨房」も併設し、まさに五感でほんものの美味しさを味わえる AKOMEYA では、さらに食を中心に日本の伝統や文化を体験できるイベントやワークショップも活発に開かれています。
定期的に開催されている「利きの会」は、お米やお酒、調味料などからテーマを取り上げ、味わいの違いを比較しながら自分の好みを発見できるワークショップ。そのプログラムのひとつ「お米の品種・分づき編」では、品種や分づきの異なる米を食べ比べチャートに従って自分の好みを探ったり、おいしいお米の炊きかたを最初の計量から洗う・水に浸す、そして土鍋で炊くところまでもれなく間近で見ることができます。最後に炊き立てのごはんを、店内で購入できる調味料を使って調理されたお味噌汁や副菜とともにいただきますが、その一見特別には見えないお膳の豊かな味わいにはどんな説明も不要の説得力がありました。
お米の品種ごとの味わいの違いや精米仕立てのおいしさを知ること。自分好みの味を自分でつくるコツを知り、長く使い続けられる道具を手に入れること。食卓を彩るこだわりの食材やモノたちに巡りあうこと。AKOMEYA は、さまざまなアプローチから暮らしの楽しみを発見できるだけでなく、そこに主食である米を掛け合わせることでお店に足を運ぶ強い動機づけに成功した、新しい形のライフスタイルショップと言えるのではないでしょうか。
【参考・出典】