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企業戦略との関係:グローバルサイトの可能性 第4回

 


小野が思いついたのは、彼が尊敬する先輩社員の仕事風景をショートムービーにすることだった。先輩社員が工作機械を操作する手元は、まさに日本の匠の世界だった。
「そういう映像を背景に、ウチの会社の創業年とか、基本的な情報を伝えていこうと思うんです。」
「それはいいかもしれないな。日本企業としての文化性が伝えられるかも知れないしな。」社長もすぐに賛同した。
「ええ、できたらとりあえず YouTube にアップしてみます!」小野の鼻の穴が大きくふくらんだ。
(続く)


 

グローバルブランディングにおける戦略

以前、BtoB企業のお客様からこんなことを聞かれたことがあります。「ウチのコーポレートカラーはブルーなんだけど、中国の拠点は、縁起がいい赤を中国サイトで全面的に使いたいと言うんだよね。どうしたらいいかな?」

製品やターゲットによって様々な色調やトーン&マナーを使い分けるBtoC企業と違い、BtoB企業の場合はコーポレートカラーを基調にサイトデザインを考えることが多いと思います。

同じ基調色を使ってグローバルサイトと各国のサイトに統一感を持たせることは、グローバル市場でひとつの企業や製品・サービスのブランドイメージを形成していく上で有効な手段です。

日経BPコンサルティングによる「企業グローバルサイト・ユーザビリティ調査」で1位の評価を受けている富士通グループのグローバルサイトは、そうしたグローバルブランディングがよく考えられています。

事例:富士通グループ

fujitsu

 

デザイン面だけでなく、運用面でも以下のような優れた仕組みがあると言われています。

  • コンテンツの質やゴール設定についてのガイドラインがある
  • サイトの価値を金額換算し、経営者層にも分かりやすい
  • グローバルでの情報発信を均一でスピーディーにする取り組みがある

実は、冒頭で紹介したお客様の質問に対して、「赤を使うことで“誇り”が伝えられるなら、それもありなんじゃないのかな?」という考えが頭をよぎりました。(実際は、その企業の各国サイトの状況を知らなかったので、よく調べさせてくださいと返答したのですが・・・。)

グローバルにある程度の統一感を出したいが、エリアの文化特性や展開するビジネスの違いも勘案したい」というのはある意味ジレンマかも知れません。しかしながら、この富士通グループのようにコンテンツ制作に関する明確なガイドラインがあれば、各国の担当者もその中でエリアの特性を考えればよいわけですから、きっとやりやすいでしょう。

 

地域の文化にとけ込むグローバル戦略

今年の6月に日本版がリリースされた日本コカ・コーラのコーポレートサイトCoca-Cola Journeyには、そういったグローバル戦略と各国文化との融合という点でひとつの答えを見ることができます。

事例:日本コカ・コーラ

cocacola

 

日本コカ・コーラのプレスリリースには、このサイトの特長が3点あげられています。

  • ウェブマガジン型コンテンツ「コカ・コーラ ストーリー」の展開
  • グローバルな連携による「コカ・コーラ ストーリー」の海外への発信
  • ソーシャルメディアアカウント( Facebook / Twitter など)との連携

このように従来のコーポレートサイトにはない、斬新で意欲的な試みが展開されていますが、グローバルサイトとして見ても興味深い点がいくつかあります

現在Coca-Cola Journeyは日米を含む6ヶ国で展開されており、メインコンテンツである「コカ・コーラ ストーリー」は各国オリジナルのものが中心になっています。それは地域の生活や文化性に深く関わるものが多く、やはり世界各国で浸透している飲料ならではのスタンスを感じさせます。

また、Coca-Cola Journeyの日本サイトは、日本の生活者が関心を持ちそうな話題を中心に構成されています。例えば、グローバルのコンテンツ構成は以下のようになっています。

  • STORIES
  • OPINIONS
  • BRANDS
  • VIDEOS
  • BLOGS

これが、日本サイトではSTORIESとOPINIONSが合体して「ストーリー」になっています。また、以下のような要素がメインのナビゲーションに独自に追加されています

  • 自動販売機
  • 知る・学ぶ
  • 企業情報
  • お客様相談室

確かに「自動販売機」なんて、日本でしかできない話題です。内容も省エネ型や災害支援型自動販売機が取り上げられ、これも日本らしさが出ています。

 

広報の方のブログを読むと、サイトリリースまでの10ヶ月間、米国本社のプロジェクトスタッフと何度も打ち合わせした経緯が描かれています。一読するとあまり苦労した印象は受けませんが、コンテンツ構成をここまで日本仕様にローカライズする過程では、かなり激しい議論があったのだろうと想像します。

しかし、最終的にはリリースされたような姿になっていることを考えると、コカ・コーラというグローバルブランドの懐の深さと先進性を感じずにはいられません。

さてさて、コーポレートサイトに関わるお話はこれくらいにして、次回からはいろんなタイプのグローバルサイトを見ていきたいと思います。

 

次回予告:グローバルに技術語りを