「ウチの工場も世界に誇れるかも知れない、それなりの技術があるわけですから。それをアピールして、世界とビジネスがしたいんですよ!」小野はグローバルサイトがその糸口になると考えていた。社長もその考えには納得したが、すぐに疑問が浮かんできた。
「でも、ウチの誇りはカタチのない“技術”だから、そんなのどうやって表現するんだ?」
「そうなんですよね~。トップページである程度伝えたいんですけどね・・・」
ふたりとも、そこで考え込んでしまった。 (続く)
トップページのメインビジュアル
トップページに求める役割は来訪者によって違ったとしても、否応なしに目に飛び込んでくるのはメインビジュアルです。特に海外の企業サイトは、全面を1枚の写真ビジュアルで構成しているものをよく見かけます。企業によっては、複数の写真を組み合わせてメインビジュアルに設定することをブランドマニュアルで禁じている場合もあります。
優れたメインビジュアルからは以下のような点で、誇りを感じることができます。
- ビジュアルそのものが強いメッセージを発信している
- 発信したいメッセージに自信がある(迷いがない)
- 独自のバリューが具体化され、見た者が共有できる etc
グローバルサイトは多言語サイトと表現されることがあるように、言葉を超えたメッセージが伝えられるようなトップページのビジュアルは、“誇り”を伝えるための有用な要素であることは間違いありません。
例えばこちらのカワサキZ250スペシャルサイト。
事例:カワサキZ250スペシャルサイト
ソリッドで重厚感のあるビジュアルからは気高さが伝わってきます。私自身もカワサキのバイクに乗っていたことがあるので、特徴あるエンジンのフィーリングとともに、何かしら“誇りの暗号”のようなものを受け取ってしまいます。たぶん、ママチャリしか興味のない女性の方でも、独特のカッコよさを感じていただける筈です。
しかし、どんな製品やサービスでも“誇り”をビジュアル化できるでしょうか?
残念ながら、それはデザイナー泣かせの注文かも知れません。
バイクはものがあるから表現しやすいのですか?
たぶん、形のあるなしは関係ないでしょう。
“誇り”は、ビジュアル1枚で表現できるほどシンプルでない場合が多いのです。
タグラインが活きているトップページ構成
私は、トップページで誇りを伝えるために最も重要な要素はタグラインだと考えます。
グローバルサイトのトップページの左上には、9割以上の確率でブランドロゴが配置されています。その下や周辺にある短いメッセージがタグラインです。ほとんどの場合、そのブランドがお客様に提供するバリューや具体的なサービス内容、目指しているゴールなどがシンプルに表現されています。
例えば、このCAPS WebにはMarketing and Communicationと書かれています。「CAPSはマーケティング理論に基づいた考え方に沿って、多種多様で効果的なコミュニケーションをご提案・創造する」ことを誇りを持って宣言しているのです。
実は、マイクロソフトやトヨタ自動車、コカコーラなど、世界的に有名な企業の場合、誰でもそのブランド価値を理解しているので、あえてトップページにタグラインを表示する必要はありません。CAPSのように知る人ぞ知る・・・というような企業にこそ、タグラインは効果があります。
SAPのトップページは“The Best-Run Business Run SAP”というタグラインが、ひとつのメインビジュアルとキャッチフレーズと連動して、躍動感あふれた誇りあふれるメッセージを発信しています。
事例:SAP
SAPはタグラインが必要ないほど、ERPの分野では有名な企業です。誰でも名前だけは聞いたことがあるでしょう。ただ、SAPの製品やソリューションの良さを正確に理解している方は、直接ERPに何かしら関わりのある人に限られるかも知れません。
ERPは経営者層に導入ベネフィットの高いソリューションです。ICTの知識が浅いことが多い経営者の方に、常にアプローチを続けたいと考えるなら、経営者視点のベネフィットをシンプルに言い切ったタグラインは有効な手段になります。
このようにトップページで誇りを表現する場合には、タグラインに軸足を置いて、メインビジュアルやキャッチコピーなどを組み合わせ、ページ全体で伝える誇りやメッセージを構成する。つまり、ある程度ブランディングの考え方をベースに置いたほうが、意味的にも、視覚的にも効果的にまとまります。
また、ブランド戦略をとっていない企業でも、顕在化していないブランド資産を洗い出して、これをお客様の視点だけでなく、社員の視点でも同じに見えるように組み立てていく(構造化する)ことにより、誇りあふれるトップページが構成できるはずです。
皆さんは、タグラインをうまく活用できていますか?
次回予告:“誇り”を伝えるための下準備