「ウチの工場もグローバルサイトを作りませんか?」 オイルのにおいが染みついた作業場に、さわやかな新緑の風が吹き抜けるある日の午後、入社5年目の小野はいきなり社長に切り出した。 「何をバカな・・・。ウチみたいな社員15人の町工場にそんなものは必要ないだろう。」社長は即座に言い放った。
「そもそもホームページなら、英語の会社概要があるからそれで充分じゃないか?」 すると、我が意を得たりというように小野の目がキラリと光った。
グローバルサイトの定義
私は企業のグローバルサイトの構築や運用をお手伝いするかたわら、日本や海外企業のグローバルサイトを観察してきました。それらを通して、グローバルサイトには「円滑なコミュニケーションは、あらゆる課題を解決する」手段として、様々な可能性を感じています。これから8回に渡り、私なりに気付いたことを事例と共に紹介してまいります。
まず、グローバルサイトの定義とは何でしょうか? 一般的に、日本企業のコーポレートサイトでは日本語の構成やコンテンツをそのまま英語に翻訳したものを、英語版としているケースを非常に多く見かけます。しかし、日本人向けに設計されたコミュニケーションやコンテンツが、そのまま外国の方に伝わるかというとやはり無理があります。
- 「誰が、誰に、何を」の一部が省略されて書かれている
- 日本人にしか理解できない文化が背景になっている
- 論理的に説明されていない etc
日本人が理解しやすい話し方や興味を持つポイントを踏まえて設計されたコミュニケーションは、外国人には理解ができなかったり、意図するところが正確に伝わらなかったりします。
したがってグローバルサイトとは「世界と語る」ことを前提に、「グローバル基準でコミュニケーションすることを目的に設計されたサイト」というように定義したいと思います。
グローバル基準のコミュニケーションとは?
実は、日本語版をそのまま英訳したコーポレートサイトが、そのままグローバルサイトとして通用する業種があります。その代表格が総合商社です。 例えば三菱商事や豊田通商などは、コーポレートサイトそのものをグローバルサイトと位置づけています。
事例:豊田通商株式会社
なぜ総合商社の場合、コーポレートサイトの英語版がグローバルサイトとして通用するのでしょうか?
第1の理由としてあげられるのは、総合商社のビジネスフィールドはグローバルを前提としている点です。日本と海外だけでなく、例えば中国と東欧など日本をまったく介さないビジネスも展開されています。こうしたビジネスの全体像を紹介していくために、特に日本や日本人に偏らず、世界の誰が見ても理解できるようにという意識を持つことができるのだと思います。
さらに、もうひとつ大きな理由があります。それは、総合商社の最大のアピールポイントは「人」であり、これを描くと企業の“誇り”が伝わりやすい点です。
総合商社の場合、企業文化や組織力、企業ブランドなどの看板を背負い、ひとりひとりが現場で仕事しています。そのバイタリティやビジネスにおけるクリエイティビティを伝えようとするので、「人」にフォーカスする部分が多くなります。そこでは必然的に、自分たちの文化やポリシー、そして“誇り”が語られることになります。
日本人と外国人のリアルなビジネス会話で、よく指摘されるのは日本人の自己主張のなさです。ありがたいことに、最近は「謙譲の美徳」や「つつしみ自体に“誇り”がある」ことをよく理解している外国人が増えています。
しかし、日本文化をよく理解していない外国人には「何を考えているのか、よく分からない謎の東洋人」という印象を与えてしまうのです。
グローバル基準のコミュニケーションにおいて、自己主張の源泉となるのは、やはり自分たちの“誇り”です。
- 自分たちの企業文化や経営理念への“誇り”
- 技術や品質への“誇り”
- オリジナリティへの“誇り” etc.
そうした“誇り”を、誰もが素直に納得できるように、筋道をたてて表現できていることが、グローバルサイトには必要不可欠だと考えています。
皆さんのWebサイトには、誇りが表現されていますか?
次回予告:“誇り”が伝わるトップページとは