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「ひこにゃん」は売れるキャラクターの王道

森 絵美

2014/05/01

すぐ廃れると思われていた「ゆるキャラ」ブーム。ふなっしーの登場でまだまだ需要はある!と地方都市や企業が力を入れています。「ゆるキャラ」と言えば、開発サイドが主張したい要素を盛り込みすぎて、ヘンテコに作ってしまったキャラクターをあえて楽しんでしまおう!というコンセプトのもと、みうらじゅん氏が命名したのは有名なお話ですが、最近はプロのデザイナーによって意図してゆる~く作られたものが増えているなどの変化が見られます。

「ゆるキャラ」には素人公募からデザイナーが手がけたものまで数多くのキャラクターがいますが、人気上位となったキャラクターはある程度売れるキャラクターデザインの法則を踏襲しています。人気「ゆるキャラ」の王道と言えるのは、初期に堂々人気ランキング1位になったおなじみ彦根市の「ひこにゃん」です。

ひこにゃんがいかに売れるキャラクターデザインの法則を踏襲しているか、『人気の「ゆるキャラ」になるための10の条件』として解説します。

 

人気のゆるキャラになるための10の条件

1.丸み帯びた重心の低いシルエット

一般的に丸みがあるものを可愛いと思う心理があると言われています。重心を下げ、手足が短いのは万人受けキャラクターの基本。

ひこにゃんは鎧兜以外は全て白丸でできています。しっぽすらありません。手足も丸に手足が生えたようなもので「モチ」と呼ばれているくらいです。

 

2.動物

人間のキャラクターは好みが出る上に生々しくなります。人気になる動物はぬいぐるみで幼い頃から親近感のある熊と、日常生活で存在近い猫などです。

ひこにゃんは白猫です。

 

3.視認性が高い鮮やかで明るい配色

メインターゲットの子供は明るい配色を好みます。特に好まれるのは黄色、赤。

ひこにゃんの兜は井伊の赤備え(あかぞなえ*)です。ちょうど歴史ブームで人気のある真田幸村を彷彿とさせるビジュアルになったのも良かったと思います。

*赤備え:戦国時代の軍団編成の一種。具足、旗差物などのあらゆる武具を朱塗りにした部隊編成の事。(出典:Wikipedia)

 

4.明確なコンセプト

コンセプトは明確にし、要素を絞り込まないとわかりづらくなります。多くて2つがベストです。

ひこにゃんは「国宝・彦根城築城400年祭」のキャラクターのため明確なコンセプトがあり、井伊直孝に縁ある白猫と赤備えに要素を絞っています。

 

5.細かいキャラクター設定はしない

想像する隙がないと好みが出て万人受けしません。

ひこにゃんのプロフィールは意外にも趣味は彦根城の散歩ということのみです。このご時勢にFacebook、Twitterもありません。後々、勝手なプロフィールが付け加えられたことで問題になっていましたが、蛇足でコンセプトからずれたり、別のキャラクター性が出てくるのは良くありません。

 

6.無表情

無表情だと見る側が勝手に気持ちを想像するため、自分の気持ちに寄り添った顔に見えると言われています。また、話す内容や言葉遣いによってキャラクター性を出さないために話さないのがベターです。

ひこにゃんは口元が笑っているようにも見えますが無表情で、話しません。白顔に無表情のミッフィー、キティーなども言わずと知れたロングセラーキャラクターです。

 

7.文字を入れない

体にでかでかと地名やキャラクター名が入っているキャラクターは人気があったことがありませんし、みうらじゅん氏にゆるいと呼ばれてしまった要因の1つとなるほどキャラクターにはタブーな行為です。

ひこにゃんが彦根城というはちまきをしていたらここまで売れなかったと思います。

 

8.キャラクターは1体にする

カッブルやトリオなどにすると印象がぼやけ、覚えてもらいにくくなります。

ひこにゃんも欲張って彼女や弟など出してきたら印象が薄まったかもしれませんし、魅力が分散し、好き嫌いも出てきます。

 

9.公募によるデザインではなく、作者がデザイナーやイラストレーター

プロは本当にその土地のことを考え、昇華した形でデザインするため、意味合いとデザインが伴ったクオリティの高いものになります。

ひこにゃんは大阪のイラストレーター、もへろん氏が制作しています。

 

10.メディア露出が高い

ひこにゃんは著作権使用料を当初無料の許可制にすることで個人・企業を問わず広く使用できたことで認知が上がりました。くまモンもそうですが利権の発生しやすいキャラクターで初期からこの方式をとったのは画期的でした。

 


 

実は私、滋賀で本物のひこにゃんを見たことがあります。その人気は凄まじく、彦根城では出演時間前から人が溢れ、一眼レフを構えた人やプレゼントを渡すファンがたくさんいました。タレントでもここまで集客力は中々ないのではと思うくらいの人気ぶりです。

着ぐるみのクオリティも高く、可愛い決めポーズもあって去り際には名残惜しそうに壁からチラ見えしたりする徹底ぶりはディズニーキャラクターのようでスタッフの方々には大変感銘を受けました。街に出ても手描きのひこにゃんが店頭を飾るなど、街全体でキャラクターへの愛、この街を盛り上げようという郷土愛を感じることができました。

「ゆるキャラ」にはある程度の売れるデザインの要素は必要ですが、その後も売れ続けるには地元の人たちによる努力の継続がやはり不可欠です。ですからデザイナーがキャラクターデザインを依頼された場合、本当にその土地のことを考えに考えて昇華した形でないといけないなと改めて思います。

 

ひこにゃんグッズ

帰りには、もちろんグッズを買いましたよ!