台所仕事のちょっとした不便をスマートに解決してくれるキッチンツールは、時間に追われる女性たちのお財布の紐を緩める売れ筋商材。それだけに市場では国内外のブランドが群雄割拠し、一方でコストパフォーマンスに優れた100均グッズが目覚ましい進化で存在感を増すなど常に様々な個性がせめぎ合っています。そんな厳しい競争を競り勝ち支持される商品には人の欲求を揺さぶるどんな価値があるのでしょうか。ユニークなキッチンツールで注目されているオークス株式会社、その開発チームのお話を聴けるというイベントに参加して選ばれる理由を探りました。
女性のアイデアと地場産業の技術で生まれたブランド
金属加工産業が盛んなことで知られる新潟県三条市を拠点にキッチン雑貨や収納家具などを手がけるオークス株式会社は、企画・開発・設計を自社で行い生産工場は持たないビジネスモデルが特徴の企業です。
そんなオークスが2010年に発売したのが、ひとりの女性社員の発想から生まれたスプーン型のおろし金「おろしスプーン」。必要な分だけすってそのまま混ぜるためムダが無い上、地元企業の独自技術を活かした切れ味鋭いおろし刃が女性の力でもすりおろしやすく繊維が残りにくいのでお手入れも簡単と評判を呼び、生姜ブームの波にも乗って大ヒットとなりました。この成功をきっかけに誕生したのが「女性ならではのアイデアを形にして、地元燕・三条でていねいなものづくりをすること」をコンセプトに掲げるブランド “leye(レイエ)” です。
マネのできない商品価値をつくる4つのかけ算
leyeは、味噌を計量してそのままお鍋で溶かせる「みそマドラー」や手を汚さずに挽肉がこねられる「ミートこねらー」など、忙しい女性を応援するアイデア商品を次々と開発。2012年8月に発売された指の代わりに繊細な調理作業ができる「ゆびさきトング」は、毎日料理するけれどネイルも楽しみたい女性たちの高い支持を集め、「2013年ヒット商品ベスト30・ご当地ヒット大賞*」に輝きました。
leyeの商品はいたってシンプルな構造のものばかりで、同じカテゴリーの商品は数知れません。たくさんの選択肢の中でなぜleyeが選ばれるのでしょう。もちろん、ほかには無いコンセプトアイデアは買いたくなる強い動機になりますが、家事が楽しくなるようなデザインや使いやすさの追求など “日々キッチンに立つ女性の目線” でアイデアを徹底的に研ぎすませ形にしていることが「こんなものが欲しかった!」と共感を呼ぶ魅力になっています。さらに地元燕・三条の職人によって長年磨かれてきた技術力が、leyeを市場で埋没しない真似のできない存在にしているのです。
出会い知ってもらうチャンスを創る情熱
そして、leyeの商品ラインナップで印象的なのが「ゆびさきトング」に代表される直球なネーミングです。アイデアを体現したユニークな形状をわかりやすい商品名で補完することで、どんな不便を解決してくれるのか初めて見た人にも瞬時に想像できる。このことが店頭はもちろん紙面や尺の限られたメディア掲載で確実に商品をアピールする武器になっています。
メディア掲載以外にも、販売店舗での製品のデモンストレーションや今回参加した店舗イベントなど、leyeは知ってもらうためのさまざまな試みに積極的です。忙しい女性たちが使える時間は限られています。せっかく世の中に便利なキッチンツールがあっても、知ることができなければ彼女たちが手に入れることはできません。便利な商品をつくるだけに留まらず、知ってもらうまで自分たちでやりきる女性開発チームの情熱が、leyeが支持される本当の原動力になっているのではないでしょうか。
【参考・出典】
オークス株式会社:レイエ ゆびさきトング「2013年ヒット商品ベスト30・ご当地ヒット大賞」を受賞
*2013年ヒット商品ベスト30・ご当地ヒット大賞:月刊情報誌『日経トレンディ』(日経BP)が選ぶその年のヒット商品番付