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どんな場にもなじむおおらかさと上品さ。「ふくさ餅」(和菓子 村上/石川県・金沢市)秋冬の和菓子十選 その7

上原 久美子

2014/02/06

和菓子について

商品名:黒糖ふくさ餅/栗ふくさ餅(栗ふくさ餅は1月初旬で販売終了)
ブランド:和菓子 村上(創業:1911年(明治44年)/石川県金沢市)
もっちり求肥と自家製こし餡、それを包むふんわり焼皮の3つの食感が楽しめるお菓子。

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CAPSスタッフランキング:7位

好き(6)/そうでもない(2)

 

3つの食感をひとくちで楽しませる、焼き皮の役割

もっちりとした求肥とほどよい甘さの自家製こし餡を、ふんわりとした焼き皮で包んだ「ふくさ餅」。実は、材料もつくり方も餅入りどら焼きと良く似ているのですが、見た目はもちろん食べた印象も全く別のお菓子になっています。

違いの決め手 となっているのが、焼き皮の役どころ。どら焼きであれば内側に隠れる気泡の立った面を表にして包むことで、その名の通りちりめんの袱紗(ふくさ)を思わせる姿の面白さが生まれています。そして、この焼き皮が求肥と餡をぴったりと包みこむことで、3つの異なる食感をひと口で楽しめるのがこのお菓子の醍醐味。

手づかみで頬張れば食べごたえのあるおやつになり、切り分ければ3層の断面が印象的なもてなし菓子の顔になる「ふくさ餅」には、どんな場にもなじむおおらかさと職人の丁寧な手仕事による上品さがあります。伝統の味を正しく受け継ぎつつ、今の暮らしの中で自然に居場所を得ているこんなお菓子が、世代を超えて和菓子の美味しさを伝えてくれるのかもしれません。

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お菓子に添えられたカードの中で「この路ひとすじ」のシンボルと共に語られている、“手を抜かず、楽をせず、当たり前のことを当たり前にする”という村上の菓子づくりの精神。こだわりを持ちながら、それを伝統を担う者の当然のこととして日々新たにひとつひとつのお菓子に取り組む、不器用なまでに一途で真面目な職人たちの姿がこの素朴なお菓子に重なります。

 

金沢文化を感じさせる「ふくさ」

「ふくさ餅」は和菓子村上のオリジナルですが、その原点とも言えるのが「艶袱紗(つやふくさ)」というお菓子。つぶ餡を焼き皮で四方から包んだ素朴な和菓子で、その包み方が「袱紗包み」であったことが名前の由来だと言われています。今では、冠婚葬祭の熨斗袋などを包むとき以外日常で使われることの少ない袱紗ですが、このお菓子が生まれた時代には今より身近なものだったのでしょう。今も艶袱紗は全国各地で作られていますが、茶道具でもある「ふくさ」の呼び名は加賀藩祖・前田利家の世から茶文化に親しんできた金沢のお菓子にぴったりです。

(参考・出典:和菓子 村上 オンラインショップ

 

やっつ目の和菓子

次回は「どらやき たいよう」(空いろ/東京都・銀座)をご紹介します。

  • (東京本社 プランナー/アートディレクター)